鈴井貴之監督インタビュー 前編・その1
先日、チャンネルNECOにお越しいただき、「鈴井貴之のロケハン。」について、雑誌や新聞のインタビューを受けられた鈴井貴之監督。(掲載スケジュールについては確定次第随時お知らせいたします)
その際、特別に当ブログ用のインタビューにも快く応じていただきました。
今回、そのインタビューの内容のうち、ネタバレの無い部分について掲載いたします(ネタバレ有りの部分につきましては、後日「後編」として掲載します)。
■夕張の外の人間として、北海道の中の人間として、できることをやっていきたい
Q.前回10月の「ロケハン。」では夕張に行きましたが、その後、夕張市の財政破綻が様々なメディアで報道されるようになりました。これについて北海道の映画人としてどう思いますか。
夕張映画祭は国際的にもブランドが認められている映画祭でした。例えば、タランティーノ監督は「キル・ビル」の中で、栗山千明さんに「ゴーゴー夕張」という役名をつける程に、夕張を愛しています。夕張は、老人の方が多い町ですがみなさん映画祭に協力していただいていましたし、市民のみなさんも楽しみにしていましたしね。
それが今、軸を失ってきてしまっています。NPO法人化して、再開を進めていますが必然的に規模は縮小せざるを得ないのが残念に思います。
昨今の夕張に対するメディア報道については問題があると思います。「悲しい出来事」とか「悲惨な現状」ばかりをニュースソースとして流しているので、報道を観た人たちは「可愛そう」というイメージだけになってしまっています。
最近、僕は何度も夕張に行っていますが、実際は街の人は元気ですよ。「破綻しちゃった。あははは」と言っているおばちゃんたちもいっぱいいます。
その街に暮らしている人が、暗く沈んで「どうしよう、どうしよう」と言っててもどうしようもないですからね。「明るく元気に前に進むためのものは何か無いかな」というふうに前向きにがんばっているんですよ。
そういうときに「可愛そうだね」といった同情的な声ばかりかけられると、「ちょっとねぇ」といった感じになるんですよね。
やはり外の人間と中の人間は違うので、「外は外としてやれることは何か」と、わきまえた上で何かできることは無いかなと僕は考えています。
また、これも微妙な問題ですが、よく「夕張の現状は50年後の日本の姿だ」といわれます。でも、実は22年後の北海道の姿なんです。北海道だけ日本の中で取り残されるというデータがあります。2030年には人口も100万人減って老人が増えたりでマンパワーが無くなり、経済的成長も(日本全体から)置いてきぼりとなってしまう。現段階のデータでも、日本は景気が良くなってきていると言われながら、北海道だけは失業率が上がっています。特に若い世代の失業率が10%を超えている悲惨な状況なのです。
なので、北海道の中の人間としては、夕張を見て、自分達も何とかしなければいけないなぁと思いますね。
今の夕張の現状を、マスコミは「夕張市の行政が、炭鉱の後の観光事業に手を出して投資したことによる借金が破綻の原因、なんでそこまで行ってしまったんだ。市役所や市長は何やっていたんだ」と非難しています。もちろん隠ぺい工作をしていたという事実は非難されるべきものではあるのですが、北海道の人間としてはちょっと違う感じ方をしています。石炭がエネルギー資源の先端だったときに掘るだけ掘っておいて、「では、これからは石油なので撤退します」と国が去っていってしまった。そのために残された労働者をどう雇用していくのかが市町村の大きな行政問題になり、それゆえに苦肉の策で「観光事業を始めてそこで労働者を雇用しよう」となったわけです。それが失敗しちゃった。北海道の人間としては国に対する憤りというのがあって、その当時に何もしてくれなくて、今になって「ダメです、つぶします」みたいなことを言うんじゃないと。
北海道には夕張みたいな崖っぷちになっている市は他にもいくつかあります。みんな「フラガール」にはなれなかったんです。
「フラガール」で、途中で一人辞めて行く子がいるじゃないですか。あの子が「夕張に行く」と言っているシーンを聞くと、「あー、この子は夕張に来ちゃうのかぁ」と北海道の人間がみるととても切なく感じましたね。
夕張の問題というのは、夕張だけの問題ではなくて、その後、北海道の問題になり、そして日本の大きな問題になっていくのかなと思うと、まず1回この夕張で何ができるのか。たぶん僕達には何も出来ないのだとは思いますが、もがくだけはもがいてみようかなと思っています。
そのひとつが、今回僕たちが夕張で実施する音楽イベント「CUE MUSIC JAM-BOREE in ゆうばり」(*1)になります。
*1:オフィスキュー設立15周年企画として開催する、夕張での野外ライブイベント(http://cmj.office-cue.com/)
[その2へ続く]


